正月のこと


大晦日は紅白、元日、2日3日と駅伝を見ながら
柴田元幸「翻訳教室」を読んでいた。
年末に押入れで発掘したのだから、おそらく2年前に買ったのだろう。
途中まで読んだしるしにオビが約5分の1の場所に挟まれていたけれど、
殆どおぼえていない。

この本は大学での実際の翻訳演習を元に作られたそうで、
1講義ごとに1つ、短めの課題英文が選ばれて
学生訳とそれに対する議論、講師の柴田氏の訳や
村上春樹訳など、たまに他の翻訳者の訳も掲載されている。

全部で9の英文が載っている。
殆ど英米文学を読んだことのない初心者としては
色々の作者の英文が読めて便利な一冊である。

颯爽と走るモグス君や竹澤君、柏原君たちを応援したりしていたせいもあるが、
読みながら自分でも訳してみたりしていたのもあって、
ずいぶんと時間がかかったのである。

これは自分だけかもしれないが、
日本語というのは、表意文字だからなのか、想像力が貧困なだけかもしれないが、
文字からイメージが浮かぶ間もなく、どんどん読み進んでしまう。
その点、母語でないから、というだけかもしれないが、
英語の場合はイメージが先に浮かんで、次の段階として、それを日本語にするわけで、
(訳さないままイメージだけが流れつつ読み進む場合も多いが)
この、イメージを言葉に落としていく作業が、もどかしくも楽しい、というのは
ひとつの発見だった。

「翻訳教室」の中でひとつだけイタリア文学があって、
それがイタロ・カルヴィーノ「見えない都市」(課題文は都市と死者2)だった。
現実の風景の中にいる人間の顔が死者の顔と重なって見える、という話なのだけれども、
「野菜売りが顔を上げると、それは祖母だった」
というあたりから気になってしまって、本屋に出向いて翻訳を買ってきた。
同じカルヴィーノの「冬の夜ひとりの旅人が」も。
集中力を欠く(わたしのような)読者向きの本で、1章が短い。
この2つをかわるがわる読んでいる。

後者は変わった構成になっていて、
主人公が本を読みはじめるのだけれども落丁になっていて
どうやら読もうとした本とは違う内容を読んでしまったらしい、、というふうに始まる筋と、
その読んでいた本の内容とが交互に章立てられて進行していく。
こんなふうに気になる小説家に出会ったのは、
大学時代に北村薫に入れこんで以来で、ずいぶん久しぶりだ。

この年末年始は天気が良くて、東京でも星がよく見えた。
実家の近くを歩きながら、母が空を見上げて、
どこかの国の国旗みたいな月と星のセットだと言った月は
だいぶ太ってしまって半月に近づいた。
これで正月も終わり。





2009⁄01⁄04(Sun) 22:01   もろもろ | Comment(0) | Trackback(0) | ↑Top

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